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2006年11月22日 (水)

丸山健二『落雷の旅路』・牙に蛍・・・泣きました

図抜けて巨躯の山イノシシが一匹、村祭りたけなわの集落へ下りてゆきます。三ヶ月前まではイノシシ軍団数百頭を束ねていたイノシシです。大ボスの座をかけた戦いを挑むものはだれもいなかったのに彼はふいにみずから群れを去った。ときおり胸のなかに吹く空虚な風に耐えられなかったのだ。だから群れから去ってひとりになった。

しかし、、、やはり。 帰ってきた伝説の作家丸山健二氏短編集「落雷の旅路」(文藝春秋)のなかの”牙に蛍”がすごいです。すごい、などの月並み以下の形容詞では丸山健二氏に庭造りのスコップではたかれそうですが、すごいです。すごいスピリチュアル小説です。家で子ども「X」にあらすじを話そうとして感極まりひとり号泣しました。 イノシシはウリボウのときに孤児になって泣いていたら、やはり両親がいない幼女に拾われて、幼女の住む村の一軒家で暮らした。イノシシを飼うなどはもってのほかだが、村人は幼女の可哀想な境遇に目をつむった。村の祭りで可愛いウリボウと少女は幸福だった。金魚売りはウリボウに金魚三匹をくれた。獅子舞の開いた口が少女の頭を呑もうとしたらウリボウは果敢に獅子舞に突っこんだ。祭りのみんなが大笑いした。帰路のあぜ道は乱れ舞うたくさんの蛍の光で明るかった。

村には嫌われ者だが猟師としての腕はかつて存在したことはないくらい凄腕の天才猟師がいる。猟師の願望は巨大軍団を束ねていた巨躯イノシシを射倒すことだった。 小川に身を浸し、においを消し、村へ下りるイノシシ。少女がどこか遠くの施設に引き取られ一軒家がすでに廃屋になっていることもイノシシは承知していた。半ば倒壊している一軒家に入っていくイノシシの牙に蛍が一つ、光っている。廃屋のなかにかろうじて花柄の模様が残っている布団があった。その花柄の上で腹這いになって目を閉じたときイノシシの胸があたたたかいものに満たされる。空虚は消えた。そのまましばし眠ってしまう。 イノシシの牙の蛍の光がせわしく点滅した。イノシシが目を覚ますと猟師の銃口が正確に急所を狙っていた。イノシシはあわてない。逃げようともしない。猟師も撃たない。銃口を外し、廃屋の天井にむけて引き金を引く。そして、猟師は背を向けた。

最期の呼吸で牙にいた蛍はイノシシの口に吸い込まれ胸の風穴に入り、やがて、完全に命絶えた巨躯からふわっと抜け出た。しばらくゆらゆら飛び回り、それから天井の穴から天へ天へと昇ってゆき、天の川に消えた。

イノシシの魂が切望することは、ただひとつだった。あの少女のことばかりだった。

   美しく生き、幸福に死んでもらいたいという願いのみだった。

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::あらすじを書いてどうするのだとお怒りにならないでください。もちろんここに書いた以上の涙涙滂沱の箇所もたっぷりあります。同短編集には十の至極の短編が輯録されています。おもしろいです。と、作家の嫌う月並み形容を連発したくなるくらい、おもしろいです。

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